Question
直接原価計算は、税務上は認められないの?
Answer
小規模企業ならば、認められる可能性もあります!
概要
直接原価計算は、原価を固定費と変動費に分けて、変動費(製造量に比例し増減する)だけを売上原価として考える会計手法です。
一方、
全部原価計算は、変動費であるか固定費であるかを問わず、製品の製造にかかった原価については、全て売上原価として考える会計手法です。
例えば、減価償却費は、固定費(昔に買った資産の償却で、製品の製造量に応じて増減しない。)です。
工場の減価償却費は、固定費だから、直接原価計算では売上原価にならないですが、工場で生産される製品をつくるには不可欠な原価であることに間違いはありませんから、全部原価計算では、当然に原価となります。
(一方の直接原価計算では、固定費は原価集計されませんので、工場製品に不可欠な原価が原価として扱われなくなってしまうことになります。 )
管理会計の超ビックテーマ 直接原価VS全部原価
両者にメリットデメリットがあり、甲乙つけがたいという状況です。
直接原価計算 → 損益分岐点が算出できる、短期的なキャッシュフローの状況に近い損益が認識できる。
全部原価計算 → 長期的に見た投資回収点を考慮すると、全部原価計算で算出した原価を回収する必要がある。
直接原価計算だとこの点が考慮できない。
結果 現状の会計の状況としては、
管理会計(会社内部の意思決定会計)としては、直接原価計算を積極的に採用することが求められる。(さらに、ジャストインタイム・スループット会計も求められる。)
制度会計(財務諸表を外部公表するための会計)としては、直接原価計算では全ての原価を集計できていないため、全部原価計算が求められる。
税務としては、「基本として制度会計の原価計算を尊重」する。一方、小規模企業において、少額の製造間接費は費用処理しても良いという通達がある。
といった状況になっています。
直接原価計算は、あくまでも、企業内部向けの意思決定会計でのみ使用されることになります。
しかし、直接原価計算は、外部向けには使えませんが、企業管理上は、超大切な会計手法!であることに間違いはありません。
超一流自動車メーカーも、直接原価計算の一類型を会計システムとして採用しているようですよ。
執筆:公認会計士・米国公認会計士・税理士 金田充弘
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