違和感がある課税関係~個人・法人間での株式の簿価譲渡について~

春休みが近づきました。

「子供達は、祖父母のところに行ける!」

とワクワクして過ごしています。

自分も子供の引率です。

しかし、仕事はしなくてはいけませんので、バタバタです。

がんばりましょう。

 

さて、過去何度かご質問があった案件について、コメントしたいと思います。

 

ご質問

 個人から法人に対する株式の簿価譲渡について教えてください。

 株式の時価は500万円、取得価額は5万円です。株式は優先配当株式です。

 売主は、株式の発行会社の従業員です。

 発行会社は社内規定で「従業員の持つ株式に優先配当を行う代わりに、株式の譲渡時には、譲渡の相手先・売却価額を取締役会が指定する。売却価額は簿価を基準とする。」旨定めています。

 この度、従業員が退職することになり、退職と同時に株式の売却を希望しました。

 取締役会は、関連会社が従業員から取得価額の5万円で株式を買い取ることを決定しました。

 従業員は、当該決定に従う意向です。

 従業員に対する所得税の課税で注意すべき点があれば教えてください。

 

ご回答

 従業員には株式を時価500万円で譲渡したものとして所得税が課されます。

 所得税法59条1項は、個人が法人に時価の1/2未満で株式を譲渡した場合、時価で譲渡があったものとして所得税を課す旨定めています。個人が株式を保有していた期間に増殖した株式の価値に対する所得税の課税を漏れなく行うための規定です。

(当該規定の適用において、売主が会社をはじめとする他者との間で合意した種々の事項は、当事者間の法律関係を拘束するものではあっても、課税関係を拘束するものではないとして扱われます。)

 結果的に、譲渡収入5万円の売買取引に対して、 約100万円の所得税が課されることになります。

 多額な納税が発生しうる個人法人間の譲渡所得、慎重に行いたいものです。

 

 執筆:公認会計士・米国公認会計士・税理士 金田充弘