正常先?要注意先?債務償還年数と債務者の格付について

 夏休みを迎えました。

 息子が家で暇そうにしているので申し訳なく思い、横浜の従兄のもとへ遊びに行かせることにしました。

 空港の出発ゲートまで連れて行くと、キャビンアテンダントさんが羽田空港の到着ロビーまで案内してくれます。

 新幹線より、安全なのではないか?とも思いますが、息子にとっては大きな冒険のようです。

 頑張って行ってきてもらいたいものです。

 

 さて、投資をするかしないかの意思決定を行う際に、「回収期間法」と言われる投資計画の評価方法がしばしば使用されます。投資金額を毎年発生する現金回収金額で割り、回収できる期間を計算し、回収期間が最も短い投資案件に投資する方法です。

 

 式に表すと、回収期間=当初投資金額/毎年の現金回収額です。

 

 弱点としては、時間的な価値を無視している点(割引計算を行わない点)や初期投資額の回収後の余剰CFを無視している点があげられますが、計算が簡便で安全性への配慮が高い点が魅力です。

 

 実は、金融機関が行う貸出先の格付査定においても、債務償還年数という回収期間法に近い方法が用いられています。

 

 式に表すと債務償還年数=借入金÷償却前利益=借入金を返済できる年数です。

 

(償却前利益は、銀行によって計算方法が異なります。基本は、「利益+減価償却」で、銀行ごとに「利益+減価償却-投資予定額」「利益+減価償却-減価償却の一定率」など様々な計算方法を採用しているようです。また、借入金から運転資本=売上債権+在庫-仕入債務を控除するという考え方もあり、銀行ごとに運用は様々です。)

 

 債務償還年数が短ければ短いほど、優良企業です。

 

 具体的には、(銀行ごとに若干異なりますが)債務償還年数が、保有資産の残耐用年数よりも短期か、10年以内であると正常先の目安、10年~25年以内であると要注意先の目安と考えられています。破たん懸念先以下の判定に債務償還年数を用いるか否かは銀行規模や査定能力等によっても異なってきているようです。

 

 先日、金融機関の担当者様と昼食し、融資のポイントをお伺いしました。

 「債務の償還力、債務償還年数は大切ですよね~。」とおっしゃっていました。

 「利益+減価償却」=返済可能額とみて、返済計画を作成することにも役立ちますし、企業の業績を客観的に見直すことにも役立ちます。

 この点を配慮しての発言だろうと思われます。

 

 ふむふむなるほど、面白い。お客様に伝えていこう!と感じた情報でした。

 管理会計論と融資はつながっているのだなあ・・・と感じました。

 

 ぜひ、債務償還年数と回収期間法、皆様の実務にも生かしてみてはいかがでしょうか?

 

執筆:公認会計士・米国公認会計士・税理士 金田充弘

 

 

 

 

 

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