信託契約と損益通算~不動産の管理信託は慎重に~

今日は、久しぶりに監査法人時代の大先輩3名(管理職3名と当時の平監査人だった自分)と飲み会に行って来ました。

思い出話も、今の職場の話も、とても楽しかったです。

久しぶりに監査したいなと思わされる楽しい時間でした。

 

さて、本日は、不動産管理信託を組成する際の留意点について書きたいと思います。

 

不動産管理信託組成時には、

①信託の受託者を不動産の管理者とすることによる私法上のメリットと

②信託を組成した後の税務上のデメリット

の間で慎重な比較衡量が求められます。

 

自分は、②を許容して①を採用できる方にしか、不動産管理信託は推奨していません。

説明資料としても、相当な枚数の資料を準備して、リスクの確認書をとって実行しています。

→必ず、数字で「デメリットとなる税額」を提示するようにしています。

 数字で示されなかったデメリットは、説明されていないのと一緒だと思うからです。

 

特に、次のような事案では慎重な判断が求められると思います。

 

信託組成目的が、大規模修繕を目的とした融資を受けるために信託を組成するといった案件の場合、信託組成後に修繕費が過大となり、信託が単年度赤字を出すことがあります。

 

例えば、11月に信託を組成し、11月~12月に大規模修繕を実施、結果、大赤字が発生した場合、11月~12月に発生した赤字は信託内赤字ということで消滅します。しかし、1月~信託組成時点である10月までの不動産所得の黒字は残存します。

 

よって、物件を通年で見れば利益は出ていないのに、1月から10月までの所得には所得税が課されるというケースが考えられます。

 

仮に、顧客が税務の専門家に申告を依頼していない場合、過去からの経験で続けてきた申告形態のまま、信託の赤字とそれ以前の黒字を通算してしまう場合も想定されます。税務署に露見した場合には、勝ち目はありません。

 

このように、租税回避を意図していない信託でも、結果的に、租税回避を防止するための税法定めにより、税務デメリットを被る場合が容易に考えられます。くれぐれも慎重にご判断ください。

 

不動産管理信託組成は、税務的には簡単なものではありません。

 

信託組成業務にあたられる際には、慎重に慎重に判断をしていただきたいと思います。

デメリットは必ず数字で提示するように心がけてください。

 

執筆 公認会計士・米国公認会計士・税理士 金田充弘